SNS精子提供の性病検査はどうする?潜伏期間と前後検査で安全性を上げる
SNSを通じた精子提供で「相手は本当に安全なのか」「どんな性病を検査すればいいのか」と不安になりますよね。多くの性感染症は無症状で進行し、見た目や自己申告だけでは判断できません。また、検査をしても潜伏期間の問題で「陰性=安全」とは限らないことがあります。この記事では、精子提供における性病検査の正しい設計方法を解説します。検査すべき項目、潜伏期間を考慮した検査タイミング、自宅検査キットと病院検査の使い分けまで、具体的にお伝えします。
性病は身近に起こる!?SNSの精子提供には検査結果が必須
SNSを通じた精子提供では、性病検査が不可欠です。多くの性感染症は無症状のまま進行し、感染者本人も気づかないケースが大半です。厚生労働省も「比較的軽い症状にとどまる場合や無症状であることもある」と明記しています。例えば、性器クラミジア感染症では男性が症状のある人は半分程度、女性では症状がほとんどない場合があり、わからず移してしまうなど現実ありえます(性感染症 | 厚生労働省)。
精子提供では、提供者と受け取る側の双方が検査を受け、結果を共有することが安全の基本です。検査は「相手を疑う行為」ではなく、お互いを守るための合理的な手段です。
SNS精子提供の現実とリスク
SNSでの精子提供は医療機関を介さないため感染リスクが高まります。医療機関では提供者に厳格なスクリーニング検査が行われますが、個人間では検査の有無や内容が提供者の判断にゆだねられます。
SNS上では「検査済み」と称しながら、検査項目が不十分だったり、検査時期が古かったりする場合もあるかもしれません。また、検査結果の画像が加工されている可能性も否定できません。受け手側が正しい知識を持ち、適切な検査項目とタイミングを理解しておくことが自己防衛につながります。
身近な性病の種類と精子提供で検査対象となる性病
精子提供では、複数の性病を検査する必要があります。身近に存在している性病の多くは自覚症状が確実に出ないものばかりです。性病検査をした提供者であっても、その経歴などは全て把握することが難しいです。人柄で信頼できそうな人と感じることはあっても、産まれてくる子供のために性感染症の情報の線引は必須になります。
性感染症は複数の感染経路を持つことがあります。自覚症状、潜伏期間、感染経路、胎児への影響における情報をまとめて一覧にします。
身近な性病の症状、潜伏期間、胎児の影響
網羅的にはならないですが、性病について、病名、感染経路、自覚症状の有無、潜伏期間、胎児・新生児への影響について、表にまとめてみました。
| 病名 | 感染経路 | 自覚症状の有無(男女別) | 潜伏期間 | 胎児・新生児への影響 |
| 性器クラミジア感染症 | 性行為、オーラルセックス(咽頭)、産道感染。 | 男性: あり(尿道炎症状、不快感など)。 女性: 乏しいことが多く、無自覚のまま感染させる恐れがある。 | 男性は2〜3週間。女性は特定困難とされる。 | 産道感染により、新生児に肺炎や結膜炎を引き起こす。 |
| 淋菌感染症 | 性行為、オーラル・アナルセックス、産道感染。 | 男性: あり(激しい排尿痛、膿)。無症状の場合もある。 女性: 軽くて自覚されにくい。 | 2〜9日。 | 産道感染で**新生児結膜炎(失明リスク)**を招く。母体には流産・早産リスク。 |
| 腟トリコモナス症 | 性行為、下着・タオル・浴槽等の共有、産道感染。 | 男性: 多くは無症状。 女性: あり(泡状・悪臭の帯下、強い痒み)。20〜50%は無症状。 | 10日前後。 | 早産、前期破水、流産を誘発する可能性や産道感染のリスクがある。 |
| 腟カンジダ症 | 常在菌の増殖(免疫低下時)、性的接触、産道感染。 | 男女共通: あり(強い痒み、酒粕状の白いおりもの等)。無症状例もある。 | 具体的日数の記載なし(常在菌のため)。 | 産道感染により、新生児が**鵞口瘡(口腔カンジダ症)**を発症することがある。 |
| 尖圭コンジローマ | 性行為、皮膚・粘膜の微小な傷、手指、垂直感染。 | 男女共通: 一般に自覚症状に乏しい。鶏冠状のイボが出現する。 | 数週間〜3ヶ月。 | 分娩時の垂直感染により、乳児が喉頭乳頭腫を発症する可能性がある。 |
| 性器ヘルペス | 性行為、無症状時の排出液、口唇性交(唾液)、産道感染。 | 男女共通: 初発時は強い痛み・水疱。70〜80%は無症状でウイルスを排出する。 | 2〜21日。 | 出産時に感染すると、新生児が重篤な新生児ヘルペスを発症する危険が高い。 |
| HIV感染症/エイズ | 性的接触、血液、母子感染(胎盤、産道、母乳)。 | 急性期: インフル様症状。 無症候期: 数年〜10年ほど自覚症状がない。 | 感染成立の2〜3週間後に急性症状。 | 母子感染(経胎盤、経産道、経母乳)のリスクがある。 |
| 梅毒 | 粘膜接触を伴う性行為、胎盤感染、極めて稀に血液。 | 男女共通: あり(病期による)。潜伏梅毒(無症状)の期間がある。 | 第1期症状まで約3週間。 | 胎盤を介して感染し、流産、死産、先天梅毒(難聴、歯の異常等)の原因となる。 |
| B型肝炎 | 性的接触、血液・体液、母子感染(胎盤、産道、母乳)。 | 急性期: あり(倦怠感、黄疸等)。 キャリア: 多くは無症状として経過する。 | 1〜2ヶ月。 | 母子感染により子が無症候性キャリアとなり、将来的に慢性肝炎等へ移行する恐れがある。 |
| C型肝炎 | 血液(主要)、性的接触(約11%)、医療処置。 | 急性期: あり(倦怠感、黄疸等)。 慢性期: 7〜8割が無症状(キャリア)。 | 抗体陽性化まで1〜3ヶ月。 | 母子感染によるリスクあり |
| HTLV-1感染症 | 母乳(母子感染)、性的接触、輸血。 | 男女共通: 大部分は無症状。数十年後にATLやHAMを発症することがある。 | 数十年(関連疾患の発症まで)。 | 母子感染(特に母乳)のリスクがあり、断乳や人工乳での予防が有効とされる。 |
正直、性病において必ず症状が出るものが少ないです。そのため、無自覚で保因者になっていたら検査をしない限り、性病の罹患はわかりません。SNSを通じた精子提供では性病に感染するリスクが潜んでいると考える必要があります。
また膣トリコモナス症、膣カンジダ症は例外的で下着やタオルの共有、常在菌の増殖で発症することもあります。必ずしも性行為だけでうつるというわけではないと理解したおく必要があります。

殆どの性病で無自覚の場合が存在するのは、男女問わず気をつけなければいけないですね。
JISARTガイドラインから精子提供の検査対象になる性病
日本生殖補助医療標準化機関(JISART)のガイドライン「精子又は卵子の提供による大概受精に関するJISARTガイドライン」に提供精子を用いる際の感染症スクリーニング項目が明示されています。ガイドラインで記載されている検査項目は梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIVの感染症項目が対象になっています。これらは胎児に感染した場合、慢性化しやすい感染症になり、検査には必須とされています。
JISARTガイドラインに明確に記載されていないだけで、性病の影響で母子ともに悪影響を受ける可能性があるものは他にもあります。そのため、国際基準を参考にするなど精子提供のドナー登録に独自に基準を設けて性病検査をするケースも多いです。例えば、FDAが発行している「Eligibility Determination for Donors of
Human Cells, Tissues, and Cellular and Tissue-Based Products (HCT/Ps)」によると検査項目として、クラミジア、淋菌、HTLV-1あげています。国内の精子提供のドナーをスクリーニングする場合において、クラミジア、淋菌、HTLV-1を検査項目に入れている場合があります。
JISARTとFDAで推奨される検査項目:
| 感染症 | 検査方法 |
|---|---|
| HIV(1型・2型) | 血液検査(抗体・抗原) |
| 梅毒 | 血液検査(抗体) |
| B型肝炎 | 血液検査(抗原・抗体) |
| C型肝炎 | 血液検査(抗体) |
| クラミジア | 尿検査または性器検体 |
| 淋菌 | 尿検査または性器検体 |
| HTLV-1 | 血液検査(抗体) |
性病はすぐ症状が出ない!ウインドウ期を考慮した検査計画
多くの性感染症には「感染してから検査で陽性になるまでの期間(ウインドウ期)」があります。潜伏期間とウインドウ期は別物です。潜伏期間は感染から症状ができるまでの期間、ウインドウ期は感染しているのに検査で検出できない期間をそれぞれ指します。そのため、性病検査の再検査ではウインドウ期を考慮して計画する必要があります。
それぞれのウインドウ期を考慮した場合、下記の表のように1ヶ月後に、クラミジアと淋病、3ヶ月後にその他の性病について再検査を実施し、挟み込んで陰性であることを確定する方法がベストです。
主な性病のウインドウ期と再検査のタイミング:
| 病名 | ウインドウ期 | 再検査のタイミング |
|---|---|---|
| HIV感染症/エイズ | 抗体検査:約22日。 | 3ヶ月後の再検査 |
| 梅毒 | 症状出現(感染から約3週間後)から、さらに約1週間後。 | 確実なラインは3ヶ月後 |
| B型肝炎 (HBV) | 1〜2ヶ月。 | 3ヶ月後 |
| C型肝炎 (HCV) | 1〜3ヶ月 | 3ヶ月後 |
| 性器クラミジア感染症 | 2〜3週間。 | 1ヶ月後 |
| 淋病(淋菌感染症) | 2〜9日。 | 1ヶ月後 |
| HTLV-1感染症 | 数週間〜3ヶ月程度。 | 3ヶ月後 |

検査費用もかかるため、個人の活動でできる範囲できない範囲を明確にしおくほうがよいと思います。
自宅でできる性病検査キットの紹介
キットの紹介は後日追記。
まとめ
- 多くの性感染症で無自覚症状がみられ、自覚症状がないため検査しない可能性があること
- 精子提供における性病検査の項目はHIV、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、クラミジア、淋病、HTLV-1が推奨で国内では独自基準が存在する
- 潜伏期間(ウインドウ期)は性病検査でも検出できないことがあるため、安全性のため、後日追加検査を行う必要がある
- 自宅でできる性病検査には項目の限界があるため、厳密な検査を必要とする場合、病院で追加検査を行う必要がある
引用一覧
以下の公的機関および専門機関の資料を基に作成しています。
1. 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト(旧:国立感染症研究所)
• B型肝炎(詳細版)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/449-hbv.html
• C型肝炎(詳細版)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/323-hcv-intro.html
• HIV感染症/AIDS(詳細版) https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/314-aids-intro.html
• HTLV-1感染症(詳細版)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/552-htlv1-intro.html
• 性器クラミジア感染症
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/426-chlamydia-intro.html
• 淋菌感染症(詳細版)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/473-gonorrhea-ad.html
• 梅毒(詳細版)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/465-syphilis-ad.html
• 性器ヘルペスウイルス感染症(詳細版) https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/430-herpes-intro.html
• 尖圭コンジローマ(詳細版)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/429-condyloma-intro.html
• カンジダ症
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/445-candidiasis-intro.html
2. 米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)
• Guidance for Industry: Eligibility Determination for Donors of Human Cells, Tissues, and Cellular and Tissue-Based Products (HCT/Ps) https://www.fda.gov/media/73072/download
3. 日本性感染症学会
• 性感染症 診断・治療ガイドライン 2008(腟トリコモナス症)
https://jssti.jp/pdf/guideline2008/02-7.pdf
4. 医療機関専門コラム
• MYメディカルクリニック:トリコモナス・淋病に関する医師解説ブログ https://mymc.jp/clinicblog/329261/
https://mymc.jp/clinicblog/329061/
• 木野産婦人科医院:妊娠中の腟カンジダに関する専門コラム
https://kinomaternityclinic.jp/column/pregnancy/3618/

